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□解体遊戯
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今日のマユリさんはご機嫌だ。
昨夜、瀞霊廷内に新しい型の虚が数体侵入。
副隊長によって殲滅された。
やったのは誰だったか?
聞いたけれど、忘れてしまった。
そして明朝。
その虚のうち形状を留めたままの個体が、ここ技術局に運ばれた。
*
「さァて…。そろそろ始めようじゃないカ、」
解体。
そう言ってマユリさんは目前の検体を見下ろし、歓喜の笑みを浮かべながら薄い手袋を自分の両手にパチリとはめていく。
なんて表情をするんだろうかと、アタシはいつも思う。
彼はいつも気に入った新しい何かを見つけた時、とても嬉々とし恍惚にも似た表情を浮かべる。
きっとそれは心の底からの喜びであり、彼の本能的な残虐性の現れ。
ブツリと、マユリさんがその個体にメスの刃を突き立てた。
途端に、もう死んでいるかと思われた虚の躯がピクリと跳ねる。
「おや、まだ生きているのかネ?
ここまで切り刻まれてまだ死なぬとは、面白い」
虚の躯は此処に着く頃には既に、原形を留めてはおらず所々の肉片を失っていた。
「フム。これは中々に面白い個体だヨ、」
正面に立つアタシを、彼はチラリと見上げた。
彼の瞳は既にうっとりと、まるで情事の際を思い浮かべてしまいそうな程、トロリとしていた。
アタシはそんな彼を見るといつも興奮し、ふしだらな妄想を抱いてしまうのだ。
「大脳と、脳幹らしきものが随分発達しているネ。
コレはかなり知能の高い虚と言える。我々に近い生物かもしれないねぇ。
生命力も強そうだヨ…」
そう言い細い指で器用に脳幹辺りを切開していくと、突然ドピュッと個体のそこから体液が飛び散り、彼の顔を汚した。
瞬間ドクリと、アタシの下半身が熱く反応を示す。
顔を汚す液体に不快な表情を示すマユリさん。
アタシにはもう、昨夜の情事の記憶が思い出されて仕方ない。
マユリさんを汚した液体を、阿近が必死に拭いとろうとしているが、彼は構わず解体を続ける。
それはそれは、ただ無心に。
アタシは彼に付着する液体を舐め上げたい衝動に駆られたけれど。
何だか分からないものを体内に入れるのは危険だと思い、止めた。
一通りの解剖が終わると、彼はその頭部と臓器を保存液に浸ける。
モワリとした生臭い臭気が、解体室に篭る。
解体終了
「とても愉しい戯(アソビ)だったヨ…、浦原」
卑猥な笑みを浮かべ、マユリさんは口元にこびりついた液体をペロリと舐め上げ、情欲の篭った瞳でアタシを見つめた。
「アタシ…、やらしい眼。してました?」
ねっとりとした視線を、彼に送る。
「いつもの事だヨ…」
マユリさんはゆっくりと、体液でびちょびちょに汚れた手袋を取り去りながら、笑った。
終。