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□恐ろしきは恋心
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所詮オスなど単純で。
刹那的な快楽を善しとする生物なのだと。
マユリは隣で肩を並べて歩く浦原をチラリと一瞥して思う。
当の本人と言えば隊首会の帰り道、先程から幾度となく廷内の女性隊士に声を掛けられ、いつも以上にヘラヘラとだらし無い表情だ。
浦原喜助。
この男が自分に向かって好きだどうとか、
いつにない真剣な顔で告白してきたのは、何時のコトだったのか?
そして半ば強引な浦原の押しに、何度か躯を重ねてしまいもした。
マユリは思いを巡らせてみたものの、馬鹿らしい気持ちになって止めた。
*
「浦原隊長っ!あの…、私ずっと隊長に憧れていて。…今っ、お付き合いされてる方はいらっしゃるのでしょうか…?」
歩いていると、突然バタバタと浦原の元に駆け寄って話し掛けてきた一人の少女。
小柄で色白な、まだ若い隊士だった。
「あのっ…!
…もし良かったら、お付き合いして、下さいませんか!?」
浦原を懸命に見上げながら、少女は言葉を続けた。
「すき…、なんで、す…」
今度は真っ赤な顔になって、俯いてしまう。
もう何度めかの見慣れた光景に、さすがのマユリも飽きてきた。
続けて言うだろう、浦原の陳腐な言葉にも。
「いやぁ〜、嬉しいっス。貴女のような可憐な女性に告白されるなんて。
アタシ、幸せっス」
ヘタリと微笑んで、浦原は少女の顔をそっと指で上向かせた。
「あのっ、じゃあ…!」
少女の、期待を含んだ顔がチラリとマユリの目に映る。
彼女の顔は浦原を見つめ、呆けたように紅く上気していた。
しかしゆっくりとした動作で、浦原は首を傾ける。
「申し訳ないっスけど、お気持ち受け取れません…」
浦原はそう言って、少女に申し訳なさそうに頭を下げた。
「あっ…。いえ別にいいんですっ!
ご迷惑でしたよね、本当にすみませんでしたっ…」
「いえ、こちらこそ」
「…では、失礼しますっ」
少女はそこで初めて隣で傍観していたマユリを見遣り、一瞬びくりと肩を震わせたあと、走り去った。
馬鹿なオンナ。
浦原の言葉に少女の瞳が水の膜で覆われていく様を、マユリは冷ややかな気持ちで見ていた。
浦原は特定の女性を作らない。
いつも気が向いた時に傍に近寄る女で、しばしの快楽を得ているようだった。
そんな事を繰り返せばいつか修羅場にも遭遇しそうだが、何故だかそうはならないらしい。
マユリは立ち去る少女の揺れる背と自分の隣で困ったように笑う浦原を見遣り、
なんて偽善的でいやらしい男なのだろうと、苦々しい思いに苛立った。
*