UNDER

□児戯
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青・黒・赤・黄色・緑





机の上に並ぶ、毒々しい色彩が美しい試薬液の入った数々の試験管。



それらをまじまじと眺め渡した後。
マユリさんはゆっくりと黒と緑、二つの試験管を手に取り自分の目前まで引き寄せた。





「これで、いい筈なのだがネ…?」




一つ呟いた後。
それら二つの試薬が彼の手によって、フラスコの内で慎重に混合されてゆく。



コポコポとした音を立てながら、フラスコ内で混交される薬液。

ソコに少しの溶解物質を垂らせば、灰色の煙りと共に少しの異臭が立ち昇った。





「出来たヨ。
さて後は…実験といこうじゃなかネ、浦原?」





そう言って、愉しげに笑うマユリさん。
研究に向かう彼の姿はいつも幼い子供の様に純粋で、アタシはそれを見るのが密かな楽しみにとなっていた。





冷たく硬質な彼の瞳がアタシの躯を舐めるように見つめ。
続いて五本の指が、躯に伸ばされる。





頭から顔、着物の上から腕・胸・腹・大腿をゆっくりと。
彼の白い指がアタシの皮膚の感触を確かめるように、緩い力で掠めていく。

まるで愛撫ではないかと思える程に、それは優しく。




「さて。キサマは何処がイイのかネ、浦原…?」



艶めく瞳で見つめられたので、アタシは何処でもと。
そう伝えたら、マユリさんは更に悦とした表情で笑った。





「では、無難に。右腕にしようカ」





何が無難なのかと問えば、この実験が失敗に終わった場合に縫合しやすい場所なのだと、彼は告げた。



彼の細い指が襟元に伸び、アタシの着物をゆっくりと脱がしてゆく。

あらわになった右肩に冷たい指が触れると、アタシの躯は不思議にも熱く奮えるのだ。





「鎮痛剤も用意しているが…。どうするかネ?」





痛みにのたうつモノの姿を見るのが好きな癖に。
そんな、思ってもいないことを口にする貴方。



何を常人ぶっているのかともう一つ聞いてみたら。
自分も一応、キサマの部下だからねと。
意外にも普通の答えが返ってきたのが可笑しかった。





「で、どうするかネ?」



再び聞いてこられたので、そんなモノは不要だと首を横に振ったら、マユリさんはゲラゲラと笑い始めた。





「激痛だヨ!それに耐えるというのかネッ!?」



アタシは彼の瞳に目を合わせたまま、頷くだけの返事を返した。



「全く酔狂な奴だヨ…、浦原」





琥珀の瞳がスッと細められ。
悦びに、にたりと微笑む彼の顔を見た瞬間。

自分の右肩に酷く冷たい感覚と、骨肉が切断される鈍い音がした。








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