リクエスト・企画作品置場

□主と奴隷(*)
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技局の一室、片隅に造られた隠し部屋。



そこには自分にしか分からない、秘密の通路と部屋がもう一つ。


目隠しの扉を開き細い通路を歩いてゆけば見える、黒い鉄の扉。

その重い扉を開けば。
全てを黒く塗り潰した部屋が現れる。

そこには蝋燭の薄灯りと、簡素なベットが一つ。

本当は技局の皆に知られないような秘密の実験を行う為に造った部屋だったけれど、今は別の意味で役に立っていた。




そしてアタシは毎夜、その部屋へと足を運ぶ。



愛する待ち人に出会う為。








「お待たせ、マユリさん」


今日も、恨めしくも悩まし気な眼差しをこちらに向ける彼がいる。





「キサマなど、待った覚えはないヨ…」



「そりゃ、つれない」



近付くアタシを警戒するような彼の低い声色に、思わず笑みがもれた。




部屋の片隅に立ったままの彼にゆっくりと近付きながら、小さく息を吸い込む。


「今夜も、来てくれて嬉しいっスよ。マユリさん…」







ここから先は
アタシが主で、彼は奴隷。








「きて。マユリさん」



警戒の色を弱めない彼に、アタシはいつものように微笑みかける。

そしてゆっくり両腕を持ち上げ、誘う。



「…命令、するんじゃないヨ。浦原」



恨めしげに睨みながら、それでも結局アタシの誘いに従う彼が、とても愛おしい。





例えそれが、本心ではないとしても。



「お願いしてるんですよ、アタシは」



素足でそろそろと近付いてくるマユリさんを、上げた両腕で捕まえて。
その細い躯を己の胸に抱きすくめる。

首筋に鼻を埋めると、いつものように彼の皮膚からは僅かなアルコールの匂いがした。





「お願い…?変わらずおかしなコトを言うネ。
《あのコト》を理由に自分の言う事を聞けと言った…。キサマの願いは脅しだヨ、浦原」




「それでもアナタは、此処にいる…」



彼の肌の匂いを吸い込むと、徐々に熱くなる己の躯。





「卑怯な男だネ、浦原…」



「それでも、アタシはアナタが欲しいんです」





抱きしめられてなお微動だにしないマユリの態度に、浦原の胸に少しだけ哀しみと苛立ちがよぎった。






















「アナタがいけないんスよ、マユリさん。あんな何でもない男に抱かれてヨガって…。
だったら相手がアタシでも、同じでしょ?」



「…ふッ、…」



立ったままの愛撫の間。
マユリさんはいつも快楽に漏れでる声を極力殺して、アタシの言葉を聞いている。



「なぜ、あんな男を相手に…?」

もう何度、同じ質問をしただろうか。
アタシは彼の肌に唇を寄せたまま、低く呟く。



「…あんな男、…だからだヨ。
何度も同じ事を、言わせないでくれ給え…ヨ」


マユリさんの言葉に、アタシはギリリと歯を噛み締める。

同時に押し寄せる、あの日の残像。



ドロリとした嫉妬と欲望が胸を占め、アタシはマユリさんの後孔に指を這わせる。





「ああして、いつも事が終ったら薬を使ってたんスか…?」



マユリさんと早く繋がりたくて、アタシはいつも優しい愛撫なんてできなかった。

今だって、早く早くと急かす己の心。

こんなセックス、本当は無意味なことだと分かっているのに。




「あッ…う…、…簡単なコトだろう?
用が済んだら記憶を消してしまえばいい。
実に効率のいい処理方法だと、思うがネ…」




性急な愛撫にも少しずつ肩を震わせ始める彼の躯。

そして快楽で潤んだ瞳に、排他的な言葉。

やはりマユリさんは、純粋なモノなんかではなかったらしい。



「酷い人ですネ、マユリさん…。
とんだ淫乱だ、」




マユリさんの後孔に指を突き入れ乱暴に掻き廻すと、彼は堪らず乱れた声を上げる。

それを耳にした途端、再び現れるあの日の影。



だからアタシはいつも、あの日のように後ろからマユリさんを犯すのだった。



「ふッ…ン!…あ、あ」



乱暴に突き上げるのに、彼は断続的な快楽の声を上げるばかり。

彼を犯している筈なのに、反対に耳から犯されていくような、不思議な感覚に陥っていく。





「マユリさん…、ねぇ…アタシは頭がおかしくなっちゃったんスかね?
こうしてると、アナタを抱いているのか抱かれてるのか…。
全く解らなくなるんですよ…」



アタシの体は開放を求め勝手に暴走していくのに、反対に空虚な場所に取り残される心。



このまま二人で溶け交じってしまえればどんなに幸福だろうと、そんなことを思った。








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