リクエスト・企画作品置場
□ふわり
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「マユリさん…」
少し前を行く、アタシとよく似た少し猫背ぎみな彼の背にそっと、声を掛ける。
「なんだネ、浦原?」
アタシの声に振り返ったマユリさんの顔は、いつものような仏頂面。
「並んで、帰りましょ?」
微笑むアタシに、不機嫌そうな表情を見せながらも歩幅を小さくする彼。
告白したからと言って、何かが劇的に変わった訳ではないけれど。
彼との距離が少しずつ縮まってゆく。
そんな日常が、今のアタシにはとても心地良い。
「ではそろそろ、恋人として先に進んでよろしいっスかね?」
だけれど、アタシは我が儘だから。
もっともっと、マユリさんを知りたくなる。
彼はそれを許してくれるだろうか?
隣で並ぶ彼の片手に、手を差し延べる。
「勝手にすればいいヨ…」
そう言って。
少し冷たい手の平が、アタシの手の平に絡みついた。
終。