主文
□指先に触れるモノ
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「なんだかチョット、悪戯したくなっちゃいますねぇ〜フフッ」
浦原は好奇心に駆られ、少しだけマユリの髪を触ってみた。
撫で付けられてはいるが、感触はやはりフワフワと柔らかい。
「んふふっ…」
調子に乗って、浦原が頬に触れようとした時。
ゆっくりとマユリが身じろいだ。
浦原が反射的に手を引くと、同時にマユリの眼がゆっくり開かれる。
身近で見るマユリの眼球は、鈍い琥珀色だった。
「……浦原、何をしているんダネ?」
覚醒した眼に存外近くに浦原を認め、一気にマユリの眉間に皺が寄る。
「いやぁ〜、ちょっと隊首会が長引いちゃいまして。此処を覗いたらマユリさんがすやすや寝てらっしゃったのでぇ〜、つい見とれちゃいました」
「盗み見とは、悪趣味な男ダヨ…。私としたことが研究途中で寝入ってしまうとは!貴様何かおかしなことをしなかっただろうネ?」
「いえ、なーんにも。
何かして欲しかったですか?マユリさん♪」
完全に訝しい眼を向けられた浦原だか、サラリとかわした。
「フンッ、まぁいい。明日も忙しいのでね、私は帰るヨ」
「はい、おやすみなさいマユリさん。アタシも何だかいい夢見れそうっス」
「…」
最後まで訝しい視線を浦原に送ったまま、マユリは技局を後にした。
浦原は、いつまでも指に残ったマユリの髪の手触りを思いつつ、ニヤケ顔をとめることが出来ずにいたのだった。
終。