主文

□お願い!阿近君
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「それにしても!やっぱり誰も知りませんかねぇ〜、マユリさんの素顔?」


「えっ!?」


一瞬で、いつもの飄々とした口調に戻った局長に、僕は驚いた。



「本当に、気になるんすよね〜。マユリさんは絶対、可愛いらしいお顔だとアタシは思うんス」


「はぁ…。気になるなら局長、副局長に直接お聞きになればいいじゃないですか?」



「無理ッスよお〜!アタシは、マユリさんに警戒されてますからねぇ〜」

笑いながら、嬉しげに目を細める局長に、やっぱり不思議な人だなと僕は感じた。



「局長は副局長のこと、お好きなんですか?」


サラリと自然に、流れた言葉。
幼い僕には自然な疑問だった。


局長はますます目を細め、呟く。


「マユリさんは、純粋であるが故に黒くも染まってしまう不器用で、可愛い人なんス」


フフフと、局長は笑う。


「アタシは彼の黒く残酷なところも。純粋で不器用なところも全て…、愛しいと思ってるんスよ」

「いとおしい?」


意味が分からず首を傾ける僕に、局長はヘラリと照れた笑みを見せ、口元に人差し指を寄せ呟いた。


「阿近くんにも、じき分かりますよ。あとこの話し、マユリさんには内緒ッスよ」



「はい…。局長」



局長の言葉は、やっぱり今の僕には少し難しくて理解できなかったけれど。
浦原局長がとても嬉しそうに笑って僕を見つめるので、再び深く頷いた。






終。
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