主文

□技術局の夏
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「キヨス…。いい加減に、リンを変にかまうのは止せよ。
此処が暇なのはリンのせいじゃねーだろ」


「ちぇっ、ちょっと遊んだだけじゃねーか」

「リンはまだガキなんだよ。ただえさえ俺達みたいな恐ぇ顔、毎日見てんだ。
ちょっとは優しくしろ」


「お前も十分、ガキだろ」

「うるせーよ」


ふるふると怯えるリンを見つめ、阿近は再び溜息をつく。


「リン、お前はもう少し堂々としてろよ」
阿近はポンポンと、リンの頭を撫でた。

「阿近さん…、」


潤んだ瞳を見上げ、リンは技局に阿近という、温厚な常人がいたことを心から感謝した。






「そー言えば…、確か現世の季節って夏ですよね?
人間達は《海》とか言う大きな池で遊ぶらしいですよ…」

阿近の存在に落ち付きを取り戻したリンが、怖ず怖ずと話し出した。


「海?聞いたことあるな。随分な人間が集まって、その池で泳いだり酒飲んだりするんだろ?」

キヨスが興味深げにリンに問う。


「はい。尸魂界にはない遊びだと、浦原局長から聞きました…」

チラチラと阿近を見上げながら、リンが話しを続ける。


「先日、浦原局長が現世の調査に赴かれた際に寄られたそうですよ」



「…何で、いちいち隊長が現世に出るんだよ。
これだから十二番隊は暇そうだ〜、とか何してるか分からない〜とか、他の隊に言われるんじゃねーの?」

ブチブチとキヨスが文句を重ねる。



「まぁ、浦原隊長は現場向きだから。
それに、今は涅副局長もいるし隊長も安心して任せてるんじゃないか」


「…確かに。浦原隊長も凄い研究者だが、副局長はまた違う意味で凄ぇよ。
考え方が普通じゃない。
あの人みたいなのを、鬼才って言うんだろうな〜」


「そうかもな」

キヨスが他人を褒めることなど珍しく思ったが、相手が涅であれば納得だと、阿近は思う。





十二番隊隊長に浦原が就任して間もなく、彼の計画に沿って併設された技術開発局。
彼はそこに、尸魂界全土から優れた技術・研究員達を集めた。


そして、浦原は程なく
〈浦原マユリ〉という名の死神を副局長として呼び寄せたのだった。


涅について、悪い噂を色々と聞かされていた局員だっが、実際に他者を逸した涅の知識と創造・技術に触れ、今では彼を崇め尊敬の眼差しで見る局員も多かった―。




「そうそう!!
浦原隊長が現世の海に皆さんと遊びに行きたいって、涅副局長におっしゃってましたよ」





「「エッ…!?」」




突然の無邪気なリンの言葉に、阿近以下ラボに集まる局員全員が固まった。
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