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□みがわり
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他の隊員が皆寝静まる、そんな刻。
俺は静かに局長の元へと足を運んだ。



こうして時々、カレの自室に赴くようになって。
既に何年になるだろうか。




俺を含めた技術局員の隊舎とは、少し離れた棟にある隊長兼局長宿舎。


そこから洩れる、淡い灯。


部屋の襖を軽く叩いて合図を送るが、何時もの如く局長からの返事はない。

小さく溜息をついて、それでも静かに襖を開ければ。
やはり何時の様に、就寝用の白くて薄い着流しを着て書物に向き合うカレの姿を認めた。



「局長、入ってもいいんですか…?」



声を掛けると、ようやくカレはこちらに目を向けた。

その顔はいつもの奇怪な化粧を落とした、本来の素顔。



「嗚呼。いいヨ」



局長は短くそう言うと、再び書物に目を落とす。

俺は静かに部屋に入り、書物を読み耽るカレの背を眺める位置で腰を降ろした。







しかし本当に寂しげな部屋だと、俺は改めてカレの居室をぐるりと見渡す。



カレの居室には小さな机と数冊の書物・二つの行灯と鏡・そして寝具。
衣類以外の装備品は、本当に少ない物しか置かれていなかった。



普段は沢山の薬剤や機械に囲まれているくせに、私的な環境が逆に全く生活感を感じさせない。



そういえば彼が居なくなってから、局長の研究時間は更に延びていたから。
この部屋で過ごす時間もそれに伴い減少しているのだろう。

この部屋に必要な物など、余りないのかもしれない。


否。


もしかしたら、彼が昔に暮らした同じこの部屋で。
過ごす時間が局長にとっては苦痛なのかもしれない。




浦原が隊長として使用していた頃とは全く異なる、殺風景なこの部屋を見る度に


俺の頭は、明確には出せない答えを模索するのだった。








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