UNDER

□みがわり
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不意に胸の辺りから脳天にかけて、モヤモヤとした怒りに似た感情が沸き上がる。



今になっても尚、居なくなってしまった彼を思い浮かべてしまう自分。



興味がないなんて言いながらも。
実はそんな理由で、浦原喜助という存在を無理矢理に消そうとしてるだけ。



この部屋に来る度に俺はそう、思い知る。










「局長…ー」



堪らなくなり、俺は目前のカレの肩に手を触れた。

瞬間ピクリと揺れた、その細い躯。




「どうした、阿近…?
酷い表情だネ」




振り返った局長の瞳は、淡い行灯の灯を受けてゆらゆらと揺らめく。

鈍い金の眼球が艶めいてとても美しい。
俺は咄嗟にカレの躯を引き寄せようと手を伸ばしたけれど。

その手はするりとかわされてしまった。





「見ていてくれるだけで、いいのだヨ…」



俺の動きをどう解釈したのか。
そう言って、ゆっくりと俺の方に向き合って。
局長はスルスルと自らの着流しの帯紐を解いていく。



「局長、おれ…」



「聞こえなかったのかネ、阿近」

「……」



既に欲に染まり始めたカレの瞳に睨まれれば、俺はいつも従順な犬の様。

手を伸ばせば届きそうな距離を保ちながら、いつもの様にカレの自慰を見つめることしかできないのだ。








局長は静かになった俺の様子を眺めた後。
ゆっくりと、着流しの下を露わに曝け出してゆく。

下着すら躊躇なく取り去ると、カレは座ったままで両脚を大きく広げ。
そろそろと自らの欲望の中心に手を伸ばす。



俺はカレの、既にゆるりと勃ち上がりかけている性器に唾を飲む。





「…ン、…はッ…」



目前で、局長が自らの性器を手淫し始める。

初めはゆっくりと撫でるように。
そして徐々に、その指先は快楽が伴う程に淫らに蠢くのだった。



しかし俺は、その様を食い入る様に見つめることしかできない。





「あッ、はあ…ハッ…う、ア…」



手淫を始めてしまえば、カレはその快楽に没頭するように何も言わない。

俺の耳に聴こえるのは、カレの性器から出る卑猥な粘液音と喘ぎ声。

そして高鳴る、己の心音のみ。






「は、はッ…ンんッ!あ」


カレの瞳がトロリと情欲に染まる。
そしてその口からは既に、艶めく快楽の声しか出てはいない。

それなのに、やはり堪らず手を伸ばそうとする俺をきつい瞳で抑圧するのだから。



俺は性急に押し寄せる欲情を自ら押さえ込むしかない。



こんな淫猥なカレの姿を目前に、ただ目を見開いて涎を垂らすだけしかできなかった餓鬼だった昔の俺。

しかしもう既に、俺の身体は成長してしまい。
見つめるだけで我慢できる歳ではなくなってしまっていた。



「クロツチ、局長…おれ…ごめんなさい。
やっぱり我慢、できない」







ぎゅうっと目をつむって、俺は己の下肢に手を伸ばした。









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