□将来の夢
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「おとうさん!」
後ろから声がかかり、斜め下に目をやると双子がボロボロの紙一枚を持っていた。燐はいつも通り、活発そうな笑顔だが、弟の雪男は頬を赤くしもじもじしている。雪男もいつもの通りと言えばそうなのだが……。
「んー、どうした二人とも」
「これ」
ずいっと紙を差し出される。
「みろ」と言うことらしい。
紙を手にとり見てみると、作文用紙だとわかった。ボロボロなのは、一度破れたのをセロハンテープでつないでいるからだ。
「えー、なになに?『将来の夢』奥村雪男………。雪男は将来、医者になりたいのかー」
雪男の頭を撫でる。
「雪男は努力家だもんなー。優しい医者になれよー」
雪男ははにかみ笑顔になる。
「ゆきおは、あたまいーもん!なれるよ!それに、しょーらいおとうさんがよぼよぼのジジィになってもだいじょーぶだ!」
雪男の横では自分のことのように嬉しそうにする燐。
「燐、父さんはジジィにはならないぞ。まだまだ若いからな」
「えー?なるよ!な?雪男」
同意を求められた雪男はどもった。
「りーんー?わしゃわしゃの刑だぞ」
頭をわしづかみにし、力任せに撫でる。
「わーー!!やめろー!!」
まったく、口を開けばいらんことしか出てこない。
そんな子供達を不思議と愛しいと思うのだ。
こいつらが大きくなって、大人になるのが楽しみだ。
そうだな。俺の将来の夢は、こいつらの成人姿を見ること、だな。
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