企画

□おはよう
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気だるい朝の光。柔らかに覚醒を促す朝日。
薄いレースのカーテンが更に柔らかにその光を通し、新羅の顔をなぜた。

「ん、カーテン、開いてる…」

新羅は珍しく早起きをしてしまったことと、その原因を見つめる。
いつもはしっかりと分厚い遮光カーテンを閉めているはずなのだが、今日はそれが開いており、白いレースのカーテンがゆったりと光を招き入れていた。
望まない覚醒を強いられた新羅は、だるそうに頭を掻きつつ枕もとの眼鏡を取り、リビングに向かった。

『おはよう新羅』
「ふぁあ…おはよう、セルティ」

平素は自分を見ると少し引いてしまうくらいにテンション高く挨拶する新羅が、今日は気だるい雰囲気である。
セルティはそんな新羅の珍しい様子に少し驚いたように肩を揺らし、PDSに文字を打ち込んだ。

『珍しいな。いつもは朝からテンションが高いくせに、今日は眠そうだな新羅』

羅列された文字を見て、新羅は苦笑しつつやや眠そうに目を擦った。

「うん。何故かカーテンが開いていてね。光に当てられて目が覚めちゃったんだ。夕べは夜遅くまで仕事だったし、ゆっくり寝ようと思ってたんだがなあ」

そう言って、ふあ、ともう一つ、セルティに背を向けてから欠伸をしている新羅に申し訳なさそうに肩を竦めつつ、セルティは新羅の肩をつつき、PDSを見せた。

『すまない新羅。私が開けたんだ』

並んだ文字はこれだけで、一見すればただカーテンを開けたことにより新羅の望まぬ覚醒を引き起こしてしまった事に対する謝罪でしかない。だが、新羅はセルティが言わんとしていることまでを正確に汲み取り、今度こそいつものようにテンションを上げた。

「あぁ、そういえば、今日はセルティと旅行に行く日だったね!僕としたことが、こんな重要な日を失念していただなんて!あぁセルティ本当にごめん!救い難い奴だったよ僕は!起こしてくれてありがとう。妖精の名に相応しい優しい起こし方をしてくれて、今こそ僕は感奮興起の思いだよ!ここからは電光石火のごとき行動力で行くから、がっくりしないでおくれ!」

それだけ言うが早いか身支度をしに自室へ駆けて行く新羅を見送りながらセルティはしばしぽかんとしていたが、やがてカタカタと肩を揺らす。

――あれだけでわかってくれるのが新羅だな。
――あんなに急がなくても、私が新羅との旅行の予定を破棄するわけもないのに。

温かいものが心を満たす。
柔らかな光の中で、セルティは確かな幸福を噛み締めた。


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短いですが、新セルでした!
あったかいバカップル感が大好きです。
そう言えばセクハラできてないよ新羅!
偶に誘っちゃうセルティと全力で真に受けちゃう新羅好きです。
真剣に詰め寄られると断れないセルティかわいい!
もう夜になかよししてるだろうに初心くさいあたりとか超かわいいです何この人たちー!

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