短編集(BASARA)

□君の知らない物語
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「俺は愛を部屋まで送る。
成実は名無しさんをたのむ。」
「わかったよ。」

屋敷に戻り、私は成実につれられて部屋に戻った。

「ありがと。」

成実にお礼を言い、クルリと踵を返して部屋に入ろうとする。
しかし、

「ねぇ。」

と成実に呼び止められた。

「なぁに?」

私は振り返り首をかしげた。
いつになく真剣な成実の顔。

「名無しさんは…政宗のことが好きなの・・・?」

私は息を飲んだ。
幸い、それは成実には気づかれなかったようだ。

「なに…言ってんのよ。
私が政宗を?ありえない。」

しかし、隠さなければいけない。

「そっか。そうだよね。
ごめん。変な事聞いちゃって。

成実も困ったように苦笑した。

「早く寝よ…」

私は部屋に入り、布団に包まった。
眠いわけではなかった。
ただ、胸が痛かった…。

「うぅ…」

布団で顔を隠し、涙を流した。

強がって『ありえない』と言う私は臆病者だった。
政宗に興味のないようなふりをしてた。
だけど…
胸の痛みはおさまることなく、増していくばかり。

「なんで…」

あぁ・・・そうか。
好きになるってこう言うことなんだね…。
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