梟とカルデア

□2_初めての召喚
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06_扉の先(キャスター視点)


「…お?」



何処からか呼ばれる声に意識が浮上する。
またか、とも思ったし久しいとも思う。
せめて楽しめりゃあそれでいいさね。
その感覚に俺は大人しく目を閉じた。



「…おっと。今回はキャスタークラスでの限界ときたか―ああ、アンタか。前に会ったな?」



自動的に与えられる知識の海から抜けた先には見覚えのあるきょとんとした男。
相変わらず戦いという単語とは縁遠そうな平和な顔つきをしてやがる。
持ち慣れない杖を持ち直し、改めてぽかんとしているマスターに自己紹介してやる。



「キャスター!」



にこ、と笑ったマスターは改めて藤丸立香と名乗り、召喚用だろう部屋を見渡す。
パッと見たところ、ほかに人はいないように思ったが部屋の外を見るにしては視線を巡らせすぎだ。



「やあよくやったねぇ立香」



ぽふぽふと少年の頭を撫でる…梟?
ポーカーフェイスは得意だが突然のことすぎて驚いたわ。
が、しかし俺はこの鳥野郎の気配をどこかで知っている気がしていた。
初対面、そのはずだ。



「君もよろしくねぇ。俺はベルエポック、ベルエって呼んでね」



ぽふぽふ。
マスターと同じようにして撫でられた頭に呆然とする。
何故ならこの感覚にも覚えがあったからだ。
しかしそれがどこだったのかが思い出せない。
知識を与えられたのにそれらは全く役に立たない。
フツー初対面の人間にこんな気軽に接触しないはずだ。
しかもこの俺が不思議と悪い気がしなかった、だなんてこともないはずだ。
まあ相手が到底人間には見えないからか、その雰囲気か。



「さあ行こうかキャスター」



そういって部屋から出るマスターに続いて部屋を出ると全体的に灰色の殺風景な廊下に出る。
簡単に施設の説明をするマスターの声に耳を傾けつつ視線はマスターの横で羽を揺らすベルエに向かう。
タン、タンと規則的に爪と床の当たる音がしてベルエが裸足だということに気付いた。
寒そうだし何より痛くねぇのか?



「ん、キャスターくん?」


「あァなんでもねぇよ」



じっと見ていたことに気付いたのか青い大きな目が俺を捉える。
俺らしくもねぇ、見すぎたか。
その間に目的地に着いたのかマスターは大きめの扉を開く。
ま、今はこの環境を楽しむとするかねぇ…



 
    
    
    
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