08/07の日記
08:05
セバシエss01
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小さな主が好きすぎて仕方のない使用人がいる。
―――正確には人ではなく、悪魔、なのだが。
彼は契約によって小さな主に呼び出され、魂を受け取るまで傍にいることになっていた。
―――最近は魂を受け取るなんてせず、人間の枠から出してしまおうかと目論んでいるが。
そんな悪魔、本名は不明、偽名セバスチャン・ミカエリスは小さな主人に会いに行った。
「おはようございます、坊ちゃん。本日は香り豊かなオレンジティーを用意いたしました」
ドアをノックして開けて、一礼。
まだ寝ている主を確認しながら、毎回の恒例文句を口にした。
そして中に入り、カーテンを開く。
すると、布団に包みこまれるようにして寝ていた主が目を覚ました。
「――――セバ……?」
「おはようございます、坊ちゃん。お目覚めですか?」
ふわりと笑う様に顔を作れば、一瞬のうちに年相応の顔が隠れてしまう。
それを内心で残念に思っているとそれが伝わってしまったのか小さな主、シエル・ファントムハイブ伯爵は顔を思いっきり顰めた。
「朝からその胡散臭い顔はやめろ。気色悪い」
「おや、気色悪いとは――」
「最悪な目覚めだな」
ぐさっと心に刺さるものがあるのだが、執事の中の執事、をやっているセバスチャンはそれを顔に出さずに最愛の主にカップを手渡した。
主がそれを口にしている間に、今日のお召し物を用意する。
この部屋に来るまでに思い描いておいたお召し物を素早く手元に寄せて、ベッド淵に座っている主の前に膝を付く。
「坊ちゃん。本日のご予定は、午前中は本社の書類の確認を。御昼食後は、14時よりドイツのドルボニスキー社との会合が。16時にはフランス支部の支部長がお越しになられます。それと、19時にイタリアの裏社会から使者がいらっしゃるとか」
「なら、最高のお持て成しを、セバスチャン」
「Yes, My lord」
洗練されたように膝を付く自身の執事を見やったシエルは着替えるために立ち上がる。
それに合わせてセバスチャンも立ち上がり、彼のナイティを脱がせていく。
白い滑らかな肌が見えた瞬間、セバスチャンはある意味で心臓に毒なその光景から逃れるように手際よく小さな主人に服を着せていく。
そして最後に、自身との契約の証しである瞳を隠すための眼帯を付けた。
「では坊ちゃん、朝食の席でお待ちしております」
「あぁ―――そうだ、セバスチャン」
「はい」
思いついたかのような言い方をした主にセバスチャンは部屋を出ようとした足を止める。
それにシエルは笑みを浮かべて尋ねた。
「そろそろ新しいゲームが届く気がする。仕事をさっさと片付けたい」
“ゲーム”という言葉にセバスチャンは笑みを深めた。
ファントムハイブ家―――それは女王の番犬・悪の貴族と呼ばれる英国裏社会の秩序の固有名詞。
女王の憂いを晴らすために秘密裏にやってきた女王の頼み事を解決する。
それは、領土の問題も然り、裏社会で蔓延る犯罪も然り。
ファントムハイブ伯爵が代々受け継いできた穢れた業である。
幼き当主たるシエルもまた、それを受け継いでいた。
彼は女王の憂いを晴らすための行為を“ゲーム”と称す。
ゲームを好み、盤上の駒を扱うキングの位置にいるシエルは手足となるセバスチャンを利用して次々にゲームをクリアしていくのだ。
「わかりました。本社からの書類を普段よりも多くご用意させていただきます」
「それから、ここ数日間の新聞をもう一度出しておいてくれ。必要になるだろう」
「御意、My Lord」
腰から綺麗に一礼したセバスチャンは、今度こそ主の部屋から出ていく。
それを見たシエルは無表情の中に悪の貴族に相応しい笑みを浮かべた。
「―――ようやく退屈な日々から抜け出せる……」
悪魔が傍にいて退屈なんて、少し贅沢かもしれないけど。
END
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08:05
あとがき
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ということでセバシエでした。
この2人は、光源氏計画を実施するセバスチャンという話がいいですね。
つまり、最初はセバ→シエなのですが、だんだんとセバシエになっていくという……。。。
実はこのお話、スランプにならなければ100万HITで書こうと思っていたお話でした。
話にあるイタリア裏社会の使者っていうのが、ボンゴレのことでして(笑)
そのうち、書きたいと思います、はい。
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