□蜜柑
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⊂蜜柑⊃

「ヒロさん、蜜柑食べます?
患者さんから沢山頂いたんですよ。」
蜜柑片手にソファに身を沈めて本を読んでいる弘樹に尋ねた。
「好きじゃないからいい。」
「えー、どうしてですか? 冬といったらコタツで蜜柑じゃないですか。」
「ウチにコタツなんかねぇだろ。
蜜柑って手が黄色くなるし。」
そんな理由で蜜柑が嫌いらしい。
それならと野分は良いことを思いついてしまった。
「じゃあ、俺がむいてあげます。」
蜜柑を手早くむきながら、素敵な提案をする。
「悪いな。…って、オイ!!」
「はい、あーんして下さい。」
当たり前のように弘樹の目の前へ一房差し出して、
最上の笑顔で云う。
「…本気デスカ?」
「本気ですよ。 だめ…ですか?」
耳と尻尾を垂らして、一歩退いてみる。
それに弘樹は呆気なく落ちて。
「仕方ねぇなぁ。」
でも、その一言は明らかに嬉しそうで、野分まで嬉しくなる。
「はい、どうぞ。」
「ん。」
大人しく野分の手から食べる。
野分はそれだけで、天にも昇りそうな気分になってしまう。
「美味い。久しぶりに食べたけど。」
「もっといります?」
「いる。」
「はい。」
満面の笑みで弘樹の頬に軽くキスして。
真っ赤な顔に全力で提案して。
「今度は口移しで!」
「誰がやるか!バカ野分」
思いっきり拳で殴られて。
「ヒロさん、痛い。」
「うるせぇ! もう自分で食うし!」
と云いきったが、行動に移すことなく。
「…やっぱ、手が黄色くなるから。
食わせろ…」
消え入りそうな声で。
「それは、手からですか? それとも…」
「好きにしろッ」
「はい。」
迷わず一房、口にくわえて。


*後書き*
お蜜柑が食べれない私の妄想。
黄色くなるよなーって。
私、柑橘集団がダメなんですよ。
食べると舌が痺れるのです。
謎の病気です(笑)
やつらは私を目の敵にしてくるのです。
ジュースとかもダメだし。
缶詰しか食べれないー。
あ、でもユズとレモンは大丈夫で
好き。


おまけ的な話


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