□半歩後ろの笑う奴
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何でこんなに好きなんだろうと
ぐらぐらする頭で思った。

⊂半歩後ろの笑う奴⊃

背後を付回す変な奴。
隣には立たない。
必ず半歩後ろ。
後頭部に穴があきそうなくらい見つめている気配が
いつもいたたまれない。
「何だよ」と後ろを振り返って睨み付けても
少し微笑うだけ。
喧嘩を売っているんじゃないか?そうだ絶対売っている。
こんなに俺を苛々させるのだから。
「オイ」
振り返って奴を睨み付ける。
「ちょっとこっち来い。」
奴の腕を掴んで人気の裏路地に引っ張り込む。鳩が豆鉄砲食らったような顔してやがる。ざまあみろ。
「えっ、ちょっとヒロさん!?そんな大胆な・・・」
「お前なぁ、さっき・・・っ」
奴の腕から掴んでいた手を離し、腕を組んで説教を始めたところだった。
急に抱き寄せられて、
「!んんっ」
キスをされた。
「なっ!何しやがるっ!」
「だって、ヒロさんがこんなところに連れ込むので、キスしたいのかと・・・」
「ななななな!」
こいつの思考回路が全くわからない。どうしたらそういう考えが浮かぶのか教えて欲しい。
・・・いや、なんとなくわかる気がする。
すっごい笑顔で「ヒロさん回路です」とかわけのわからないことを抜かしそうだ。
はー、どうしてこんな奴に絆されたかなぁ・・・はっきり云って変人だよな、こいつ。
まじまじと奴の顔をみた。じっと俺をみている。

それからどれくらい睨み合っていただろうか、だんだん馬鹿らしくなってきた。
もう、こいつはこいつでいいじゃないか。
「あの、ヒロさん。」
「ん?」
「もう一回、いいですか?」
「ッ!し、してもいいけど家に帰って来れたら、なっ!!」
そう云って脱兎のごとく駆け出した。
「あ、ちょっとヒロさーん!!」
奴が使ったことのないような裏道をつかって絶対早く帰ってやる。
それで部屋には入らず、奴が帰ってくるのを見計らって後ろから抱きしめてやる。
はっ、たまにはそんなのも悪かねぇだろ。


*終*
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