□萌殺の上條
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例にもよって弘樹は
いつもの電車にギリギリ間に合うかなという時刻に家を出ることになった。
原因は、野分が時間に起こしてくれなかったからだ。
正確には、弘樹の寝顔を鑑賞していた野分に何十回と声を掛けられたのだが―優しかったのだが―
それに甘えて起きなかっただけなのである。
そして、野分は欠かさず“行ってらっしゃいのキス”をして弘樹の思考を停止させる。
気恥ずかしさに数秒遅れた思考で急いで出ようとドアのノブに手をかけた後ろ姿に、
「待って下さい。」と声を掛けた。


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