□無邪気、それは太陽に似て。
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着いて早々、二人は露天風呂に直行し、
まったりとした時間を過ごし、
夕食は先程済ませて、今は二人で晩酌の最中である。
「ヒロさん…」
「何だよ。」
「呑みすぎじゃないですか?」
余程、ここの地酒が気に入ったのか早いペースで飲み続けている弘樹に問い掛ける。
「そんなけとはねーぞ。」
上機嫌な声がそう返す。
案の定、弘樹は出来上がってしまっている。
もう、手遅れに近かった。
「今晩はこれ位にしませんか?」
かなりの本数空いた徳利を一瞥して云う。
「いーや。」
ふいと顔を逸らして駄々っ子のように返す。
(ああ、可愛いなー…じゃなかった。本当に止めないと。)
全くときめいている場合ではなかった。
「また明日、飲みましょう。だから、今日はこれ以上は…」
すぐに気を取り直して、弘樹の目を覗き込んで云う。
「明日って何だよ。明日には帰んなきゃなんだろー?
だから、イヤ。」
頑として譲らない。
もうこれは、自然に弘樹が眠りに落ちないと解決しないようだ。
そう悟った野分は諦めて畳の上に転がった徳利を片付けにかかった。



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