□うつらうつら夢心地
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不意に玄関口から音がして振り返る。
帰ってくるはずのない野分が其処に立っていた。
驚いた、でも夢の中の出来事のようにはっきりしない。
「あ、ヒロさんただいまです。
部屋の明かりが消えていたので、もう寝てるのかと思いました。」
「おかえり、今日帰ってくるなんて聞いてないぞ。」
なんとなく「しまった」と思い消そうとしたのだが
いつもの半分くらいしか脳が働いていないようで、リモコンが見当たらない。
「いいですよ。」
唐突に云われた言葉。訳が理解らなくて問うた。
「何が?」
「消さなくても、ですよ。一緒に観ましょう。」
返事をする前に弘樹の隣にぴったりと寄り、そっと腰を下ろす。
少し冷たい野分の体。
(外は寒かったんだな)
春にむかって随分と暖かくなったが、
夜はそれでも冬を手放さない。
心持ち自分の半身を押し付けて暖めようとする。
それに気付いたのか、小さく微笑われたような気がした。
それが子守唄のように安心できて・・・



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