【掌編】

□【掌編】一話
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「……手伝ってあげたほうがいいのか?」
「およしなさい。やどちんにとって、わたしたちは幽霊みたいなもの――手助けしたら、『段ボールが勝手に動いた!』ってやどちんを怯えさせるだけですわ」

 それでも何とか宿は段ボールをそのへんまで運び、おでこに手をやって汗を拭う。その後も静止することなく、どこからか長机をもってきた。

「何してんだろうな、あのひと……」

「さぁ……」

 軍辞はすぐそばで怪しい行動をしている人間がいることに、まだ慣れていなくて落ちつかなかったが、とまとは無関心に欠伸をしている。

 基本的に軍辞以外の〈秘密結社〉の面々はマイペースだった。

「気になるなら、見にいくのがよろしくてよ?」

「そうだな。どうせ暇だし、よっこいしょ」
 軍辞ととまとのいる位置は元・プールの凹みなので、宿がいるプールサイドは高い位置にあって、どうにも見にくいのだった。
 軍辞は立ちあがると歩き、梯子を登って宿のそばまで移動する。

「〜♪ 〜♪」

 彼女は独特の、言語ではない鳴き声をあげながら、段ボールから取りだしたものを長机にどんどん並べている。
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