【本編】

□【本編】三話
4ページ/17ページ

 憂奈木鞠和と関わって、〈秘密結社〉に強制加入させられて。

 けれど、軍辞の日常にはあまり変化はなかった。

 軍辞は毎日〈アジト〉に顔をだすように、あの暴力女――月吉とまとに命じられているので、いちおう従っているけれど。それは放課後のことで、彼女らは学校のなかでは近寄ってこないので、授業中はこれまでと変わらない。

 ある事情からやや孤立している、というか周りから腫れものに触れるようにされている軍辞は、緩慢な居心地の悪さをおぼえながら、それでも平凡な学生生活を送っている。

 同じクラスの鞠和も常に寝ているので、視線があうのも稀で、会話もしない。

 変化が訪れたのは、体育の授業中だった。

 坂上田村麻呂中学校の体育は基本的に男女合同で行われる。中学生なのでいまだに男女の体力差があまりないし、基本的に男女の区別をつけるのは好ましくないとされる風潮だ。

 現在は広々とした校庭で、何人かの組をつくってサッカーの練習をしている。ぽこんぽこんと飛び跳ねるボールを眺めて、軍辞は樹木がつくった日陰のなか、ベンチに腰かけてぼんやりしている。

 見学なのだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ