【本編】
□【本編】三話
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憂奈木鞠和と関わって、〈秘密結社〉に強制加入させられて。
けれど、軍辞の日常にはあまり変化はなかった。
軍辞は毎日〈アジト〉に顔をだすように、あの暴力女――月吉とまとに命じられているので、いちおう従っているけれど。それは放課後のことで、彼女らは学校のなかでは近寄ってこないので、授業中はこれまでと変わらない。
ある事情からやや孤立している、というか周りから腫れものに触れるようにされている軍辞は、緩慢な居心地の悪さをおぼえながら、それでも平凡な学生生活を送っている。
同じクラスの鞠和も常に寝ているので、視線があうのも稀で、会話もしない。
変化が訪れたのは、体育の授業中だった。
坂上田村麻呂中学校の体育は基本的に男女合同で行われる。中学生なのでいまだに男女の体力差があまりないし、基本的に男女の区別をつけるのは好ましくないとされる風潮だ。
現在は広々とした校庭で、何人かの組をつくってサッカーの練習をしている。ぽこんぽこんと飛び跳ねるボールを眺めて、軍辞は樹木がつくった日陰のなか、ベンチに腰かけてぼんやりしている。
見学なのだ。