【本編】

□【本編】二話
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 憂奈木鞠和は空気みたいなやつだ。
 見えない。聞こえない。そこに存在していると、誰からも気づかれない。

 いつも教室の隅っこのほうで、ぽつんと、独りぼっちで存在している。

 あるいは、毒ガスなのかもしれない。誰にも見えない、手が触れられない、けれど確実に『そこに何か嫌なものがある』ということはみんな感じるのか、目を逸らし、鼻をつまみ、口汚く罵るのだ。

 どこにでもいる、コミュニケーションの輪のなかに入れなかった、いじめられっこ。

 もちろん、これまで平々凡々な生涯をおくってきた秦軍辞には、これまでそんな毒ガス少女に関わる機会などなかったはずなのだけど――。

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