【本編】
□【本編】三話
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何のために学校にきてるんだろう。
憂奈木鞠和を見ていると、いつもそう思ってしまう。
もちろん軍辞も四六時中あの憂鬱な女の子に注目しているわけではなく、むしろ関わることがなければ他のものと同じように、そちらに視線を向けることもなかっただろうけど。
ともあれ鞠和は傍から見ていてもわかりやすいぐらい、いじめられている。靴を隠され椅子には画鋲が置かれ机には落書きされ、当たり前のように傷つけられている。
そのくせ、やる気がないのか何なのか――授業中にはずっと机に突っ伏して眠りこけてるし、学校にくることで何かを得ているとも思えない。
彼女は登校するたびに虐げられ、失っていく。
学校にくるメリットが何もない――軍辞が同じ立場なら、たぶん不登校になっている。 クラスメイトその他のいじめはかなりあからさまだし、稚拙なので、教師も気づいていないわけがないと思うのだけど。あまり真剣に対応をしない。黙認しているみたいだ。
いじめはよくない。最低だ。かっこ悪い。
それは誰にだってわかってるし、軍辞だって鞠和に気まぐれに手を差しのべたのは、彼女自身に何かの感情があったわけでなく、ただ常識みたいなものに従っただけだ。