【本編】

□【本編】八話
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『秦軍辞 くん
 夜分遅くに失礼いたします。
 突然のお願いで恐縮ですが、緊急の用件がございますので――今夜、お電話をしてもよろしいでしょうか。
 ご迷惑とは思いますが、何卒よろしくお願いします。
 肌寒い日々がつづきますが、秦くんも体調に気をつけてくださいませ。
かしこ
月吉とまと』



 相変わらず、メールの文章だけは不気味なぐらい丁寧だな……。思いつつ、軍辞はちいさく欠伸をもらした。午後の九時なのだ、いくら軍辞が健康的な中学生男子だからといって、もうだいぶ眠い。

 しかし、月吉のやつ、いったい何の用なんだ……。慇懃無礼な文章が逆に、違和感ありまくりで要らぬ恐怖を誘う。普段は軍辞が何か余計なことを喋った瞬間に日本刀でぶっ叩いてくる(*避けないと死ぬ)のに。

 軍辞は風呂に入る途中だったので、着替えの下着とパジャマを抱えたまま、とまとに『いいけど、何?』と端的に返信する。携帯電話を自室の机の上に置いて、まぁ風呂に入ってるうちに返信があるだろ、と思ってそのまま……。

 自分の部屋からでて、階段をゆっくりと降りる。
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