【掌編】
□【掌編】十九話
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「それじゃあ、いっくぞぉ――」
誠が気の抜けるような声をあげて、重たそうにバスケットボールを両手でもちあげた。むしろ意外というか、けっこう女の子的に非力のようである。
ちなみに、地面に棒きれでてきとうに敷かれた陣地に、僕と誠、対面にとまとと軍辞が向きあっている構図である。先にボールを投げる権利はさっき誠が勝ちとってきた。
僕としてはさほどやる気はないし――まぁ、誠のお手並み拝見といくか。たしょう、使えるようなら今後、あくあに何かあったときに手駒にできるかもだし。
「おいでなさい!」
とまとがやる気満々に、おおきく両手を広げるラスボスっぽい立ち姿で待ちかまえている。その後ろで、僕と同じくやる気なさそうに軍辞が棒立ちである。うん、気持ちはわかる。何が哀しくて小学生のようにドッジボールに勤しまなくちゃならんのか。
誠は土埃をあげて、動作だけは豪快にボールを構えると。
「おりゃあ!」
投げた。
野球部(マネージャーだけど)とは思えぬでたらめなフォームで、むしろ積極的にパンチラしようと目論んでいるかのようにお尻を高くつきあげ、けっこう無様だった。楽しそうなのはいいけど。