【本編】

□【本編】十話
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「で、相談ってのは何ですの?」

「うん、それがね――って、ひぃいいい!?」

 変な声をあげて、茄后美は両手をばたばたさせると、そばにいたとまとに全力で抱きつく。ふたりが並んで腰かけているのは、とまとのいつもの昼休みの定位置――裏庭に生えている巨大な木の枝である。
 とまとに叱られながらへっぴり腰で登ったものの、ちょっと間違えれば地面まで真っ逆さまだ、茄后美は何だか得意げなとまとに涙目で訴える。

「こんなの人間が食事する場所じゃないよ!?」

「意外と慣れると快適なんですのよ?」

 根でも張ったかのように危うげなく腰かけたまま、とまとはホットドッグに「はんむ」とかぶりついた。お上品なのに、そういったところ豪快だ。

「ほら、木の上に住んでる民族とかいますし、そういうホテルも世界にはあるでしょ?」

「少数派でしょぉおお!?」

 茄后美も騒いでいたが、切り替えが早い性格だ、とりあえず下を見ないように努めながらお弁当箱を開いた。姉の力作の、卵焼きやら冷凍食品やら。
 慣れてしまえば見晴らしもよく、遠く尾根も臨める、わりと素敵なロケーションだ。茄后美はどきどきしながらも、そう思いこむことにしつつ語った。

「相談てのはね、お姉ちゃんのことなんだよ」

「? 以前、犬がどうこうとかいうとかいうのは聞きましたわよ?」

「あぁ、それとは別問題っていうか――もしかしたら関係あるのかもだけど、ごめんね、何か相談ばっかりして」

「べつに」
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