【本編】
□【本編】十一話
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ほっそりとしていて、色気はあんまりない。むしろ、男の子みたいだ。不健康なぐらいがりがりで化粧を落とすと目元の隈が目立って、お化けみたい。でも、それは茄后美のため生活のために身を粉にしてる結果だから、きれいだ。
「なぁに、お姉ちゃん――珍しいよね、いつもあたしが『お姉ちゃ〜ん♪』とか引っつこうとするだけでウザがるのに。どういう風の吹き回し?」
「女同士、裸一貫で話そうと思って」
会社では似合わぬ愛想笑いばかりしてるせいだろう、「表情筋使いたくねえ」という感じに怖いぐらいに無表情のまま、潮はかんたんに身体を洗うと湯船に入ってきた。
「ちょっ、無理だって――お姉ちゃん入るならやっぱあたし出るって」
お互いの膝がくっつく距離、お湯がなみなみと溢れて排水溝に吸いこまれる。
「窮屈だよ、もう。お姉ちゃん――お風呂なのにリラックスできないよ、逆に疲れるよ」
「詰めなさい」
潮は言葉少なにそう言うと、自らも膝を折り曲げて体育座り。目元に飛んだ飛沫を指先で拭うと、じっとこちらを見据えてくる。
彼女は姉妹ふたりでいるときは、あまり喋らない。
むかしはもっと酷くて、誰にも理解できない言語で喋り、異様な服を着て練り歩くような少女だった。なかば引きこもりになっていた時期もあり、茄后美は両親とともにたいそう心配したものだ。