【本編】

□【本編】三話
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 誰も自分を助けてはくれないと。ここは敵地で、自分は孤独なのだと。

 何をしても変わらない。いじめられ、隅っこに追いやられる。それを実感し、だから周りに期待しない。こちらを無視し、けして理解できない彼女のことを、周りは怖がり――疎み、攻撃する。悪循環だ。あるいは構造的欠陥。

 教師は鞠和を嫌い、生徒はそれに追随する。

 あるいは逆に生徒が彼女を蚊帳の外に置いて、教師もそれを看過する。

 鞠和はあんまりそんな自分の立場に疑問をもっていないようだし、傷ついてすらいないように見えるけれど、そんなわけがない。軍辞だったら同じ立場は絶対に嫌だ。

 なのに、彼女は今日も登校してくる。

 何のために?

「ま、俺には関係ないけどな」

 小声でつぶやいて、軍辞はそれでも目を逸らせずに、鞠和をちらりと見た。

 熟睡している彼女の背中には、誰かが張り紙を貼りつけていた。

『おばけだぞ〜』と書かれている。

 言い得て妙だとは思った。

× × ×

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