【本編】
□【本編】六話
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防寒具を目に痛い真紅で統一し、とまとはちっちゃな両腕でがんばって何かを抱えている。
「今回は、バスケで勝負ですわ!」
バスケットボールだった。
意味のわからなさが増した。
そういえば、ここは〈アジト〉のすぐ近く、例によって誰も近づかないような寂れた一角なのだが――よく見ると生い茂った樹木の隙間にバスケットのゴールがぽつんと置かれており、いちおう使えそうだった。
足下は雑草や石ころだらけで、ドリブルとか難しそうだが……。
何が哀しくて、休日の朝っぱらからよくわからん暴力女とスポーツにいそしまなくてはいけないのか、軍辞は思いつつ、白い吐息をいたずらに吐きだす。
ていうか通過儀礼も何も、もう軍辞が〈秘密結社〉に入って一ヶ月が経とうとしているのだ――まだ仲間として認められてなかったのかよ、とか拗ねるような気持ちもある。
「ま、諦めて付きあってあげることね」
かたわらには、白熊風の着ぐるみをまとった宿の手を握って、和服の上から毛糸の帽子やら何やらで全力で防寒している美血留がいた。彼女はふだんから血の気のない頬を寒さで真っ白にして、くすくすと笑う。