【本編】

□【本編】七話
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「べっつにぃ、たまには良いじゃないですか姉弟水入らずというのも――離れて暮らすようになってからお姉ちゃんは軍辞くん成分が足りないんです、禁断症状なんです。だいたい、こないだはとまっちゃんと二人ででーとしてたじゃないですか! 今度はお姉ちゃんの番です! ひとりずつ順番に攻略して最後はCG描くひとが大変なハーレムエンドだなんて軍辞くんのエロ番長♪」

「…………」

 軍辞はもう無視することにして、携帯電話に表示された地図のとおりにずんずん歩いた。だいたい、先日とまとと一緒にいたのは鞠和の自宅を探していたからで、デートなどではない。

 ともあれ、実の姉とはいえ、同年代の女の子と一緒に歩くことなんて――〈秘密結社〉に入るまで経験したこともなかったから、何だか不思議な気分になる。これまでは野球一筋だったから、どういう態度をとればいいかわからない。

 うん?

 女の子と二人で歩いて?

 そんな経験が、昔あったような……?

「どうしたんですか、ぼうっとしちゃって」

 ぎゅむ、と油断していたらまた哩音に片腕を捕獲された。露出しすぎの胸元をしきりに見せつけるようにしているので、かなり心臓に悪い。

「ふふ、一般的な姉弟が恋愛感情を抱かないのは、常に自分のそばにいる異性というものが当たり前になってしまい、恋愛の醍醐味――所有欲とか、スリルとか、本能的な欲求が励起されないからです。けれど、あたしたちの場合は少し離れていた期間がありましたからね! そろそろ軍辞くんはお姉ちゃんを異性として見始めているにちがいない!」

「姉貴姉貴、俺、むかし女の子と二人で歩いてたようなことあったっけ?」
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