【本編】
□【本編】八話
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通話ボタンを押し、軍辞は月吉のやつ絶対に怒ってるだろうな、と思いつつ。
「もしもし?」
『ふわっ?』
驚いたような声が帰ってきた。
とまとだ。電話越しに聞くと、肉声よりもよりキンキン子供っぽく響く。
『あ、あの。もしもし、ぐん…秦、くん?』
「そうだよ。つうか『秦くん』とか呼ぶな気色の悪い。前から思ってたけど、何でおまえは電話とかだけ礼儀正しいんだよ。いつもそうしてろよ」
『し、し、仕方ないでしょ、電話とか慣れてなくてどうしたらいいかわからないんだもの! じゃなくて、あなた、もっと早くでなさいよもーっ!!』
怒鳴り声で、鼓膜がびりびり震撼する。
『何度も何度も電話したんですから! なのに反応がないから、もしかしたら事故にあったんじゃないかとか、病気で倒れたんじゃないかとか……とにかく、えっと、ばかーっ!!』
「うおう、うるせぇな――夜なんだからもっと声抑えろよ、耳が痛い……。だいたい、そんなすぐ電話がくるとは思わなかったんだよ」
『すぐ電話するに決まってるでしょ! 待たせたら悪いし、こっちはずっと携帯電話を目の前に置いて返信がくるの待ってたんだから!』
「ちょっと風呂入ってたんだよ、悪かったな。おまえがそんなに俺とお喋りしたいとは考えもしなかったんだよ」