【掌編】

□【掌編】十五話
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 自宅で、秦軍辞は宿題をやっていた。
 べつに勉強は好きでもないが嫌いでもない、野球を辞めたいま他に趣味もなく――何となくだらだらやっていたら試験の成績はあがり、教師には褒められたりした。まぁ、つづけていれば成果がでるのはよいことだ。

 部活を辞めて怪しげな連中と付きあっている噂が流れている現状、教師の視線もきついときがあるし――外聞をよくしておくのは損にはなるまい。
 コツコツやるのは、好きだ。たとえ代償行為であっても、気が紛れる。

「あれ、辞書がねぇな」

 英文と格闘していたら、ふと気づいた。このままではジョージが何に怒っているのかわからない。軍辞は苦虫を噛みつぶした顔をすると、「学校に忘れてきたっけか」と鞄のなかをごそごそまさぐった。
 溜息をつき、やっぱ勉強とか似合わんことをするもんじゃねぇな――と目元をつまんで揉み、疲労の溜息をついた。軍辞は片目の視力を事故で失いかけたため、乱視がちで、ときどき顔面が片側だけ引きつって痛む。

 度の異なる眼鏡でも嵌めればよいのだろうが、あれはあれで長時間つけていると気分が悪くなってくる。左右の目の視力がちがいすぎるのも面倒なところだ。
 今日はもう何か白けてしまった、もう諦めて寝ようかな……。でも試験のたびに月吉のやつが無意味に「点数で勝負ですわ!」ってうるせぇんだよな……。あいつに負けるのも癪だし……。
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