【掌編】
□【掌編】十五話
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「これって、煙草――ですわね」
ばれた。
軍辞は観念して、項垂れる。それを見て、とまとは戸惑うように。
「あなた、こんなもの喫うんでしたっけ?」
とまとが顔をあげると、その正面で軍辞は頭部をかばって(致命傷を避けるために)蹲っていた。とまとは怪訝そうに。
「……何してますの?」
「いや――」
殴られるかと思って防御してたのだが、意外ととまとの反応は穏やかだった。
とまとは溜息をついて。
「べつに、こんなものにいちいち目くじらたてたりしませんわよ。〈秘密結社〉は憂鬱な子供たちの互助組織、誰だって後ろ暗いものを隠しています。でも、それでもみんな受けいれてくれてますわ」
えっへん、と立派な胸を張って、とまとは誇らしげに断言した。
軍辞は安堵して。
「そうだよな、おまえのその銃刀法違反とかも見逃されてるもんな――」
軍辞としては気になるが、まぁここは軍辞のこれまで積みあげてきた当たり前の常識が通用しない場所なのだ、と理解する。そんな〈秘密結社〉だから居心地がいいし、ふだんは周りに迷惑かけないように縮こまっている連中が、素のままの自分を晒けだして交流できる。
一安心して脱力していると、とまとと目があった。
揉みあったりしてるうちに、ほとんど触れあうような距離にいたのだ。