【掌編】
□【掌編】十五話
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互いの吐息が絡むような位置。とまとの、おおきな双眸と真っ赤なほっぺた。とまとも気づいたのか、それでも離れようとはせずに、じっとこちらを見ていた。
「なぁ、おまえさ――」
「ななな、何ですのっ」
なぜかテンパっている。
もじもじと指遊びをして「ふたりっきり……軍辞とふたりっきり……」と唸っているとまとに、軍辞は小首を傾げつつ。
「おまえ、煙草とか喫ったことあるか?」
「え? え? 当然ですの!」
目をぐるぐるさせながら応えられたが、何だろう、伝わっている気がしない。
「じゃあさ――」
身を乗りだすと、とまとは手をばたばたして「だめぇっ! たしかに妙な雰囲気だけど二度と軍辞とキスなんかしないんだからっ! 吸うだなんてそんな上級者テクはできませんの……!!」と騒いでいた。
そういえば前に事故でキスしたなあ――と思いつつ、会話が成立してないので。
話を聞け、と彼女の三つ編みを引っぱってから。
「煙草だよ、煙草。喫ったことあんのかって」
「ほへ? 煙草? あ、そうですわよね……」
何だかちょっと残念そうにつぶやいてから、なぜか機嫌を損ねたようにそっぽを向くと。
「ふ、ふん! 当然ですわ! あなたにできることは、この月吉とまとには何でもできますのよ!」
なぜ意地を張る。