【掌編】
□【掌編】十五話
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「わ、わかってますわよっ」
「おまえ、やっぱり喫煙したことないんだろ」
「できるもん! そのぐらい! 馬鹿にしないで!」
「――とまっちゃん、あたしに貸して?」
「え? あ、はい――どうぞ」
「ここのスイッチをいちど引いてから、押すの。そしたらほら、火がでるから。煙草、貸して」
とまとのくわえていた煙草を、自分のくちびるに移動させると。
「間接キッス♪」
微笑んで、憂奈木鞠和があっさり火を点けると、紫煙を吐きだした。
もやもやと、通路に煙が漂った。
「って、まりりん〜!?」
とまとが「びくう!?」と仰け反って、いつの間にか自分の横にいた親友に仰天する。
「い、いつからいましたの!? というか何でそう気配がありませんの!?」
「え? あ、ごめん――何だか良い雰囲気だったから……」
申し訳なさそうに言う鞠和は、今日もいじめられているのか、なぜか制服のスカーフだけがなかった。ぼさぼさの前髪によろわれた可愛らしい顔が、煙草の火でわずかに照らされている。
慣れた感じに煙草を味わっている彼女に、とまとが「おろ、おろ」しながら。
「だだ、だいじょうぶですの!? 煙草なんか喫って!? まりりん、ぺっ、しなさい! ぺっ!」
「そんな心配しなくても、べつに死んだりしないよ〜?」
鞠和はのほほんとして、煙草をくちびるから遠ざけて、くゆらせながらも。