【掌編】
□【掌編】十五話
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扉を開いて、踏みこむ。部屋のなかは雑然としていて、どこに何があるのやら。脱ぎ散らかした衣服や空き缶が転がり、だめな男の部屋の典型であった。
「えぇっと」
本棚に視線を向けると、しばらく触れてないのか埃が溜まったところに辞書がささっていた。かなり旧版だが使えんことはあるまい、と軍辞は手にとって――。
ふと、すぐそばに置かれたものに気づいた。
それはやけに古めかしいマッチと、新品の、まだビニールもはがれていない煙草の箱だった。
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