【掌編】

□【掌編】十五話
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 翌日。

「ふう……」

 授業を終えた放課後、軍辞は憂鬱な中学生たちの互助組織――〈秘密結社〉の本拠地、廃プールを改造した奇妙な〈アジト〉で溜息をついていた。一見すると廃墟だが内部は生活空間として整えられており、室温もほどよい。
 幸い、今日はまだ誰もいないようだったが念のため、ボイラー室などに繋がる通路まで移動すると壁際に腰をおろした。この位置なら、誰かが入ってきてもすぐには軍辞に気づかない。

 それを確認し、おもむろに鞄のなかから煙草とマッチを取りだした。

「持ってきちまった……」

 何の変哲もない煙草の箱と、マッチだ。どちらも父の部屋にはたくさんあったので、ひとつぐらいチョロまかしても気づかれないはずだ。ニコチンが何rとか書いてあったりするが、銘柄も含めてよくわからない。まったくの、未知なる存在であった。

 眺めているだけで、何だかどきどきしてくる。
 我ながら小心者すぎる。手首を切ったり爆弾つくったりしてきたのに――でもまぁ、考えてみればそれは〈秘密結社〉のみんなに巻きこまれた結果で、軍辞が自らこういった悪いことっぽいことをするのは初めてなのだ。
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