【掌編】
□【掌編】十六話
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筋骨隆々とした大男だ。僧侶のようなスキンヘッドで、露わになった頭皮にはいくつもの疵痕。サングラスをかけていて、服装はMIBのような黒スーツである。ほとんどコスプレみたいな格好だが、全身から立ちのぼる「俺に触れたら火傷するぜ」的な危険な雰囲気は本物である。
彼は玄関扉の前にウンコ座りして、神域を守護する狛犬のように動かない。よくできた置物かと思ったぐらいだ。
扉の前に座っているので、無視もできない。蹴っ飛ばしてどかすわけにもいかない。
どうしたもんか、と僕が姉の背中に隠れつつ様子を見ていると――その姉が、いつもの陽気さで「どうも〜」と声をかけた。
「お久しぶりです、お呼ばれして参上しました――王路史乃と、文花ちゃんです。今日はあなたのご主人さまじきじきの呼びだしだし、前みたいに追い払ったりしませんよね?」
「…………」
大男はのそりと熊のように立ちあがると(僕は「あ、動いた。彫像とかじゃなかったんだ」と場違いなことを考えていた)、しばしこちらを探るようにしていたが。
やはり無言で背を向けると、おおきく扉を開いてくれた。
よかった、RPGの門番モンスターみたいな風体だから警戒してたけど、バトルしなくてもいれてくれるらしい。いや当たり前なんだけど。
「どうも〜。さ、文花ちゃん――怖がらなくていいから、おいで♪」
離れていた手を握り直すと、姉が僕を導いてくれる。
× × ×