【掌編】

□【掌編】十六話
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 しばらく、まったりしていると。

「お、お待たせしましたわっ」

 テンパった感じに言いながら、態度だけはしおらしく、月吉とまとが姿を見せた。
 学校での彼女とは雰囲気が一変している。見るからに高価そうな、どう考えても普段着ではないドレス風のワンピース。ゆったりしたつくりなのに、隠しきれない中学生とは思えぬ胸の谷間。いつも三つ編みにしている髪の毛もほどかれていて、ふわふわと波打ったその真紅の髪の毛には宝石のような光沢があった。

 何だか別人みたいだ。
 それはあの、いつも装備している物騒な日本刀がないせいかもしれないけど。

 ちなみに僕らは鷹丸とやらに広い客間に通され、そのまま放置されていた。あんまり歓迎されていないらしく、お茶などもでない。西洋鎧や絵画であちこち飾られていて、言っちゃ悪いが成金っぽい。壁にかけられたどうも本物らしい西洋剣を物珍しくて眺めていた僕は、「いったい何してますの?」みたいな怪訝そうな視線を月吉から向けられ、疚しい現場を見られた気分で押し黙ってしまったけど。

「やっほう、月吉さん」

 いつでも動じない姉が、穏やかに手を挙げた。こいつはどこでもマイペースに振る舞えるので、今も何やらノートPCを開いて書きものをしていた。

「今日はお招きありがとう♪」

 そして、非の打ちどころのない完璧な営業スマイルを浮かべたのだった。何という胡散臭さ、と僕は思うのだけど――月吉は「ぼっ」と火が点くように赤面して。

「あ、先生……」

 僕のことなど目に入っていないように、恍惚として。
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