【掌編】

□【掌編】十六話
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「私もよくわからないんだよ、あまり他人には深入りしないようにしてたんだけどね。気がついたら彼女のお気に召したようで。べつに、特別なことはしてないんだけど」

「何をぶつぶつと言ってますの?」

 とまとは不思議そうにしながら、僕らの正面に腰かけた。棺桶か何かのような、あまり機能美は追及していないうつくしい椅子である。クッションは手編みのようだ。おおきな椅子に腰かけると、あらためてこの娘がちいさいのがわかる。
 服装も相俟って、お人形さんのようだ。

「あら、お茶も用意してませんのね――まったく、先生とそのおまけに対して失礼極まりありませんわ」

「おまえも失礼だけどな」

「鷹丸、鷹丸――」

 とまとは僕の言葉を無視して、手をぱんぱんと叩く。すると、すぐに先ほどの軽薄そうな青年――鷹丸とやらが、お茶とお菓子の一揃えをもって姿を見せる。それらを乱暴に机に置くと、こちらを一睨みし、鷹丸は即座に姿を消した。
 やっぱり、招かれざる客って感じなんだけど、僕ら。

「ごめんなさいね」

 湯気をたてる紅茶に角砂糖をいれて、とまとははにかんだ。

「まだ雇って日が浅いものですから、教育が徹底されてませんの」

 というか、ふつうに使用人っぽいものがいることに驚いてるんだが、一般家庭で生まれ育った僕は。ほんと、お嬢さまなんだよなあ。
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