【掌編】
□【掌編】十六話
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「何だか疲れてるみたいだね」
あくあが、面白そうに僕のくちびるをむにむに指先でいじった。
「おれが与えた任務が、思いの外に大変だったのかな?」
「あくあの命令に従うのは大好きだよ、だから幸せなだけだ――でも、女と喋ったからぐったりしてるんだ……」
「君は、見た目が女の子みたいなのにねえ」
あくあに言われたくないけど。
「ていうか、ほんとは――女の子なんだっけ?」
密着している僕の胸元に、あくあが悪戯っぽく指を添えた。
僕は応えない。
そういう話をしてるんじゃない。
「まぁいいけどね、おれは君が男であろうと女であろうと、おれの役に立ってるうちは愛してあげるよ」
あどけない表情でそんなこと言うんだから、んもう食べちゃいたい……♪
食欲に似た感情のまま、僕はあくあの髪の毛をはむはむして。
「月吉とまととは、予定どおりに関わりをもてたよ」
報告をする。今日はそのために訪れたのだ。でも役目を果たしたらここにいる理由がなくなるので、先延ばしにしていちゃいちゃしていたのである。
「うん」
あくあはすべてを見通していたというように、微笑むと。