【掌編】

□【掌編】十六話
2ページ/37ページ

「何だか疲れてるみたいだね」

 あくあが、面白そうに僕のくちびるをむにむに指先でいじった。

「おれが与えた任務が、思いの外に大変だったのかな?」

「あくあの命令に従うのは大好きだよ、だから幸せなだけだ――でも、女と喋ったからぐったりしてるんだ……」

「君は、見た目が女の子みたいなのにねえ」

 あくあに言われたくないけど。

「ていうか、ほんとは――女の子なんだっけ?」

 密着している僕の胸元に、あくあが悪戯っぽく指を添えた。
 僕は応えない。
 そういう話をしてるんじゃない。

「まぁいいけどね、おれは君が男であろうと女であろうと、おれの役に立ってるうちは愛してあげるよ」

 あどけない表情でそんなこと言うんだから、んもう食べちゃいたい……♪
 食欲に似た感情のまま、僕はあくあの髪の毛をはむはむして。

「月吉とまととは、予定どおりに関わりをもてたよ」

 報告をする。今日はそのために訪れたのだ。でも役目を果たしたらここにいる理由がなくなるので、先延ばしにしていちゃいちゃしていたのである。

「うん」

 あくあはすべてを見通していたというように、微笑むと。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ