【掌編】

□【掌編】十六話
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 何を企んでるんだ――こいつは。僕は姉の嘘くさい笑顔が固定された顔を睨みつける。ただの姉として、教師としての善意からこんな話をしているわけではあるまい。何か狙いがあるのだ、きっと。
 あくあは、ここまで想定していたのだろうか。わからない、だとしても狙いが読めない――あいつが僕をとまとに接近させたのは、〈秘密結社〉の内情を探るためだ。でも、それは何のために? こういう話の流れになることも見越していたとして、どういう意味があるのだ?

 僕は頭がぐるぐるする。考えるのは苦手だ、あくあに会いたい。

「〈秘密結社〉のみんなも、そのときは誘ってくれても構わないよ?」

 その言葉に、とまとが「びくん」と反応する。でも、姉もそういえば〈秘密結社〉とやらの一員なのだ、まったく活動には参加してないみたいだけど。

「私や水無月くんはどうも、滅多に出席していないからあまり仲間だと認めてもらってない気がしますしね――親睦を深めよう、ということですよ。世知辛い世の中です、互いに支えあわなきゃいけませんしね?」

 今度こそ失敗したくありませんし、と姉さんは誰にも聞こえないような声で、独りごちた。
 相変わらず何を考えてるかわからないけど、このときばかりは、とっても純情で誠実な――中学生みたいだった。

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