【掌編】
□【掌編】十六話
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「お、男と女だろ!? なに考えてんだおまえ、羞恥心はないのか!?」
「へっ?」
月吉はしばし「………?」と困惑したような表情を浮かべて、こちらを、視力の低いひとのように目を細めて凝視すると。
心の底から意外そうに。
「あなた、男の子でしたの?」
ええええええ!?
気づかれてなかったのか!? いや、たしかに学校でも女子の制服を着てるし今日の普段着もそんな感じだったけど――名前も『文花』ってちょっと男っぽくはないけど! わかるだろ、ふつう! こう、空気で!
「ふぅん、ほんとに男の子? まったくそう見えませんけど――まぁ、いいですわ。そういうことにしておきましょう、もうすっかりお風呂に入るテンションでしたので、今から引きかえすのも面倒ですし入りますわよ? よろしいですわね?」
よろしくないが、とまとはあっさり風呂場に踏みこんでくる。何て鷹揚なやつだ、照れ屋で赤面性のくせに妙なところがてきとうだ――お嬢さまってことだろうか、下々のものに肌を見られても気にしないということか。それともマジでまだ僕が女の子だと思ってやがるのか。
「ま、たとえあなたが破廉恥な真似をしようとしても――こいつの錆にしてやるだけですしね♪」
などと、日本刀の刃をすこし露わにして脅してくる。怖っ。