【掌編】
□【掌編】十六話
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「わたしね、いつも――こんなふうでしょう。暴力的で、情緒不安定で。みんな、怖がるし。その気持ちもわかりますの。でも、先生はそんなわたしでも受けいれてくれる」
「便利に利用するだけだよ、あのひとはいつだって」
「それでもいいんですの。避けられ、興味をもたれずに――まるでその場にいないみたいに、腫れものに触れるように扱われるよりは、ずっと」
「いいか、月吉」
僕は何だか面倒になって、ぶっちゃけることにした。この無邪気とすらいえる、真っ直ぐな女の子が、わけのわからぬままに不幸になるのは何だか嫌だった。
「僕は、おまえたち〈秘密結社〉を調べるために、おまえに接触したんだ」
気まぐれである。
疲れているのだ、きっと。
「あくあはね、これまであらゆる共同体を破壊してきた――学校も家庭も何もかもね。どこにも属せずに、周りとの関係をこじらせて、踏みつぶしてきたんだ。今回だって同じだよ、きっと。あくあは爆弾だ。扱いかたを間違えると容易に起爆する、もっとも深く潜りこんでから。今はその準備段階だ、僕らは――君たちの敵だ」
「わたしたちなんか相手にしていても、徒労だと思いますけどね」
とまとは薄々とこちらの意図は察していたのだろう、言動とは裏腹に妙に聡いところがある女の子だ――真摯に、こちらを見据えて。
「わたしたちは、行き場をなくして傷つき疲れ果てた、憂鬱な中学生たちの互助組織。単なる、傷の舐め愛をする駄目人間たちの集まりですわよ。危険視する価値もありません、いてもいなくても同じ――わざわざ敵対しても、骨折り損だと思いますけど」