【掌編】
□【掌編】十六話
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「そうだろうと思ってたよ」
「あくあ、僕を嵌めただろ。危うく殺されるところだったよ、月吉と姉さんの関係を知らなかったら僕は今ごろ病院か墓の下だ」
「君なら生きのびられると信じていたんだよ。あと教えないほうが面白いかなぁって♪」
この野郎。可愛いなぁ。
「姉さんに頼るのは不本意だったんだけど、あの状況じゃあ仕方ない――明日の日曜日にでも、何でか月吉を自宅に招待して、姉さんと会わせる流れになってしまった」
「ふふ、ついでに姉弟――仲直りしたら?」
「姉さんは近ごろ進路のこととかでうるさいんだ」
「嫌なら、もうやめてもいいよ? おれの言うことなんか無視すればいい、そうだろ?」
不遜な物言いとは裏腹に、あくあが何だか壊れてしまいそうなほど不安げで。
その海色の両目が、うるうるしてたから。
「あくあ!」
僕は思わずあくあを押し倒し「だいじょうぶだよ僕は一生あくあといっしょだよ愛してるよぉ!」と叫んで、「ぎゃわーっ!」と悲鳴をあげた彼にげしげし蹴られた。
× × ×