【掌編】

□【掌編】十六話
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 あくあが、なぜ〈秘密結社〉とやらに興味を抱くのかはわからないけど。
 ただの単なる知的好奇心を満たすための暇つぶしだったとしても、あくあがほんのちょっとでも喜んでくれるなら、僕はその命を果たそう。

 構図は簡単だ。
 スパイみたいなものである。
 とまとと交流し、仲良くなって、〈秘密結社〉の内部事情を調べる。

 でも相手が相手だ、命の危険を覚える――あの脳みそプッツン女、出会い頭に日本刀で斬りかかってきたし。鍛えてなければ即死だった。だいたい、何であんな日本刀なんて持ち歩いてるんだ。銃刀法はどうなってるんだ。
 ともあれ、とまとはなぜかこの姉に好意を寄せているらしいので、その弟として――姉を紹介する、という名目で関係を取りつけた現状がある。

 なので、こうして姉と望んでもいないドライブの真っ最中なわけである。腹立たしい。
 気が重いなぁ。あくあに会いたいなぁ。あのきれいな髪の毛に顔を埋めていつまでも心ゆくまでラブラブちゅっちゅしたいなぁ――。

「そろそろ到着するよ」

 幸せな妄想にひたっていたら、いつの間にか周囲の景色が様変わりしていた。
 坂道の多い、小綺麗な高級住宅街だ。

 でかい邸宅がいくつも建っている。

「ここにくるのも久しぶりだなあ」

 姉が感慨深そうに、独りごちた。

「中学生以来だよ」

× × ×

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