【掌編】

□【掌編】十六話
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 姉の趣味なのか僕はワンピースを着させられてるので、足下がすうすうして落ちつかない。女装はべつにむかしからなので慣れてるけど、余所様のおうちを訪問するのにいいのかこれ。可憐な少女を守るライダースーツの正義の味方みたいな二人組になってるけど。

「しかし、ほんとに久しぶりだよ」

 姉は僕とちがって細かいことは気にしないのか、「さぁ行くよっ」と元気よく僕の手を握って敷地内に踏みこんでいく。

「むかしはもっと和風だったんだけどねえ、ずいぶん改築したもんだ。かんぜんに洋風じゃん、建て直したみたいだよ。いや実際、まるっとつくり直したのかなあ。あんときだいぶ壊されてたしなあ――」

「意味深な独り言をするな、気になる。あんた、ここにきたことあるのか?」

「姉に『あんた』はないでしょ、まったく。文花ちゃんは口が悪いなあ、……むかしちょっとね。私だって好きこのんでこんな豪華な空間にこないよ、どうしても断れない付きあいがあってさ」

 そこで僕の表情に気づき、意地悪そうに微笑むと。

「おや、その様子だとこの屋敷の立派さに気後れしてるな――借りてきた猫みたいで可愛いなあ♪ よしよし、お姉ちゃんについてきなさい♪」

 ぎゅうっと手のひらにちからをこめられる。むかつく。でもまぁ威圧されているのは事実だ、不本意ながら文句は言うまい。
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