【掌編】

□【掌編】十七話
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 あたしは何だか放っておかれた子供みたいに不満で、くちびるを尖らせると。

「チャラ男、追いかけなさい。こうなったら、とことん尾行してやるわ。あいつが何を考えてるのか、行動してるのか探るのよ。だって気になるんだもん」

「え〜、やめときましょうよお嬢。何かやばそうな娘さんですよ、変な事件でも巻きこまれたらお父上に申し訳が立たないっすよ」

「いいから、早くしなさい――壊すわよ、このガラクタ」

「やめて〜、抵抗できない子をいじめて楽しいんすか! この吸血鬼!」

「そのとおりよ、ってかこんなボロボロの廃車、『子』って感じでもないでしょうが。お爺ちゃんよ、無駄に死に損なってるこいつに安らかな眠りを与えてやるのよ」

 げしげし蹴りつけると、チャラ男は「ひ〜ん!」と変な声をあげて言うとおりにする、まったく、使えない男……。思いつつ、開いたままの窓から、再び追いついたデイジーの横顔に呼びかける。

「ねぇ憂奈木さん、焼き芋はもう買ったんでしょ――何でまだ販売カーを追いかけてるのよ、たくさん焼き芋が欲しいならまとめ買いすればいいでしょ?」

 ってか、すでにひとりで食べきれないぐらいの量が紙袋に入ってるみたいだし。じゃあ、何だってこの娘はしつこく焼き芋屋さんを追いかけてるの?
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