【掌編】
□【掌編】十七話
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デイジーはしつこいあたしに辟易したような表情で、ぽつりと。
「あの車、気になって」
え? とあたしは販売カーを見る。でも、どこにでもあるような造形の、ごく平凡な焼き芋屋さんだ。もしかして、デイジーはこの車に何かこう犯罪の萌芽みたいなのを見つけたとか……? クラスのいじめられっこは、実は人知れず活躍する名探偵?
ドラマチックな妄想に期待で胸を膨らませたが、わくわくしているあたしとは裏腹に、デイジーはいつもどおり無表情のまま。
「この販売カーって、……いつ芋を補給してるのかなって」
ずっこけそうになった。
「あと、石焼き芋〜♪ っていう売り口上は運転手さんが言ってるのか録音なのか、どういうルートで町を巡ってるのか、どういう営業戦略なのか――とか、気になって」
この娘も好奇心だけで行動してたーっ!?
いや、いいけどさ――ミステリアスな印象がだいぶ台無しなんだけど。
「えっと、それだけの理由で授業脱けだしたりしたの?」
「学校はつまらないし、寝てるだけよりは有意義かなって」
「それは同感だけどさ。そういう、どうでもいい疑問は――いま解決しなくちゃいけないことなのかしら?」
「ううん、べつに」